恋の神様はどこにいる?

「それにだ」

「ん?」

「巫女の仕事は、結構キツいぞ。授与所に座って御札やお守りを渡すだけが仕事じゃないからな」

「うん」

この前千里さんも、同じようなことを言っていた。忍耐力・精神力・体力も必要とされる仕事だって。

どれひとつ自信がないけれど。やると決めたからには、どれも手を抜くつもりはない。

でも志貴の顔を見ると……。

「まあ俺の下で働くんだ。こき使ってやるから、そのつもりでいろよ」

なんて言って右の口角を上げて意味深な顔をするから、諦らめにも似た境地に立たされてしまう。

「何黙ってんだよ。俺の下で働くのは不服か?」

「そんなことないけど」

「これからお前が覚えなきゃいけないことは、俺が全部教えてやる」

「全部……」

全部ってどこまで? 巫女以外のことも全部? 

って、私って馬鹿? そんな都合のいいこと、あるわけないじゃない!!

あまりにも短絡的な発想に、ふっと笑いが込み上げる。

「はい、お待ちっ」

タイミングが良いのか悪いのかチャーハンがカウンターに置かれると、笑っているのがバレないように顔の前で手を合わせた。

「いただきます」

「おう。まずは明日、巫女舞の練習するからな。いっぱい食べて、栄養補給しておけ」

いきなり巫女舞の練習? 見学とは聞いていたけど、舞うなんて聞いてないよぉ~。

そう言いたくても、口の中にはチャーハンがいっぱいで。ただ志貴の顔を見て、目をパチクリすることしかできない。

「なんだ? チャーハン旨いか?」

違うし!! いやいや、チャーハンは美味しいけど、言いたいことはそこじゃなくて!!

うんうんと首を縦に振りながら、チャーハンを慌てて咀嚼して飲み込んだ。






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