恋の神様はどこにいる?

もう九時を過ぎているというのに店内は賑わっていて、外を見ると数人だけど待っている人もいたから、私たちは食べ終わるとすぐに店を出た。

「こんな時間なのに、並んでる人がいるね」

「飲んだあとの締めのラーメンってとこじゃないか?」

「ああ、そっか」

志貴の横に並んで歩き駐車場まで行くと、やっぱり当たり前のようにドアを開けてくれる志貴。

「ほら、乗れ」

「う、うん。ありがとう」

また“お姫様”とか言われるかもなんて身構えていたんだけど、至って普通の志貴で拍子抜け。

そのまま車に乗り込むと、ドアを閉めようとした時に志貴のスマートフォンが鳴り出した。

「悪い。ちょっと出るわ」

そう言って志貴はドアを閉めると、車から少し離れてスマートフォンを取り出した。そしてディスプレイを確認すると、一瞬こっちを振り向きすぐに背中を向けてしまう。

何、今の?

志貴がそんなことをするから、誰から電話が掛かってきたのか気になってしょうがない。

もしかして、五鈴さん?

そうであってほしくないという思いが、私の頭の中を過る。

だってその電話が雅人さんや千里さんだったら、こっちに背を向けることは必要ない。

背を向ける=話している姿も見られたくない=それは女性?




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