恋の神様はどこにいる?
そしてその勢いは朝になっても治まらず、約束の時間よりも30分も早くここに到着してしまったというわけ。
でもベンチに腰を下ろしまわりの人の多さに圧倒されると、その勢いは鳴りを潜めしまった。
よくよく考えてみれば、別にあの男の名前なんてどうでもいいことじゃない。なのに私ったら『なんて卑怯なやつなの!!』なんて興奮しちゃって。もう二度とここには来ない、もう二度とあの男には会うことないなんて思っていたのに、翌日会うことになってしまうとは……。
あっでも、ちょっと待って。まだ1時までには時間がある。今帰れば、あの男に会うこともないじゃない。なんでそんなこと、もっと早く気づかないのよ、私!!
鞄を持ち慌てて立ち上がると、前も確認せずに走りだす。
でもすぐに誰かとぶつかって、派手にしりもちをついてしまった。
「イッたぁ……」
「大丈夫? ごめんね」
「いえ、私が前を向いてなかったのがいけな……」
あれ? 今の声、どこかで聞いたことがあるような。
嫌な予感が、私の身体中を駆け巡る。
恐る恐る顔を上げてみると、そこには……。
「え?」
神主さん?
目の前には紫色の袴をはいて上品に微笑む男性が、私に手を差し伸べている。
てっきり、あの男だと思っていたのに。