恋の神様はどこにいる?

し、志貴のヤツ……。

夫婦が私の方を見ていなかったら、あっかんべーをお見舞いしたいところだけど、生憎今はその状態になくて。

ウズウズする気持ちを抑えながら、授与所を出て夫婦の元に向かった。

夫婦を案内する前に一度だけ志貴を見たけれど、もう既に他の参拝者の対応をしていて。

ここはあくまでも職場であって遊びに来ているわけじゃないのに、少しだけ寂しいと思ってしまった。

こんなんじゃ駄目だよね。千里さんにも言われたじゃない、仕事中は集中してねって。

胸に右手を当てて、気持ちを整える。

「ご案内いたします。どうぞ、こちらへ」

志貴に頑張っている姿を見てもらい、私というひとりの人間を認めてもらいたい。そして志貴の私に対する気持ちが、少しずつでも変わってくれればいいのだけれど……。



夫婦を待合室まで案内すると、すぐに授与所へと戻るため社務所を後にする。外に出るとそこから授与所が見えて、志貴がひとりで手際よく仕事をこなしている姿が見えた。思わず立ち止まり、その姿を眺めてしまう。

参拝者ひとりひとりに笑顔を向け丁寧に接する姿は、普段見ることのできない志貴の姿で。

仕事に自信と誇りを持っているからこそ、あんな表情ができるんだと思わずにはいられない。

志貴って、ホントに素敵。これは彼に惚れてるからとか関係なく、素直にそう感じたことで。志貴の下で巫女修行ができることを、初めて心から嬉しいと思った。

「な~に? 志貴の仕事姿って、カッコいい~とか思ってた?」

「わあっ!?」

「ごめんごめん。驚かせちゃったかな?」

「千里さん。急に声かけないで下さい」

千里さんの登場は、ホントいつも突然で。しかも志貴のことを考えてる時にばかり現れるから、そのタイミングの良さにどこかで見張ってるんじゃないかと疑ってしまう。



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