恋の神様はどこにいる?
でもあのままあの場にいたら、また泣き顔を見られていた。
こんな弱い自分を見せたくないのに、このところの私は志貴のこととなると涙が出てしょうがない。
今までの恋愛で涙を流してことは一度だってないのに、自分がこんなにも涙もろいなんて初めて知った。
トイレの鏡の前に立つと、大きく息を吐く。気持ちは晴れないままだけど、涙は止まったみたい。
目は少し赤いけれど、大泣きしたわけじゃないから瞼が腫れてなくて良かった。
「小町、あなたの持ち味は笑顔でしょ。それで志貴を落とすって決めたんだから、泣いてちゃ駄目じゃない」
鏡の中にいる自分にそう呟いてみても、すぐにはうまく笑えなくて。でもその顔があまりにもブサイクすぎて、逆に笑えてきてしまった。
「まあこれでも、泣き顔よりはマシかな」
両手を頬に当てると、しっかりと自分の顔を見つめる。
落ち込んだりはしゃいだり、志貴の行動や言葉に翻弄されっぱなし。こんな気持ちになったのは初めてで、それを上手くコントロールできなくて迷惑をかけることもあるけれど。
どれもこれも全部、志貴のことが好きだから。
「だから頑張るって決めたんでしょ?」
うんと大きく頷くと、パンッと頬を叩く。
いつまでもここに居る訳にはいかないと身だしなみを整えると、部屋に戻るためトイレを出た。