恋の神様はどこにいる?

「おまえ、トイレに駆け込むの好きだよな?」

「うぉ!? し、志貴?」

まさかトイレを出たところすぐに志貴がいるなんてこれっぽっちも思っていなかったから、変な声が出てしまう。

「で、気持ちは落ち着いたわけ?」

「な、何言ってるのか、さっぱりわからないんだけど。私はただトイレに行きたかっただけでっ……!?」

「嘘つけ」

そう耳元でささやかれた時には、もう視界は真っ暗で。頬に志貴のぬくもりを感じて、自分が志貴に抱きしめられていることに気づく。

「志貴、止めて。こんなところで、誰かに見られたらどうするの?」

「どうもしねーし。つーか、なんでトイレに行ったワケ?」

「そ、それは……」

「赤い目して、また目にゴミが入ったとか言うつもりじゃねーよな?」

「これはさっき、五鈴さんの舞いを見て泣いた時に」

「どうだか。五鈴は授与所の手伝いに行った。今からは、俺とマンツーマンで稽古するぞ」

志貴は私の身体に巻きつけていた腕を離すと、サッと向きを変えてしまう。

今日は五鈴さんも一緒に稽古のはずだったのに、急に授与所で手伝いなんて。

もしかして、私の態度が五鈴さんの気分を害してしまったとか? 

私がまだまだ子供で、五鈴さんに嫉妬にも似た感情を持ってしまっただけ。五鈴さんは何も悪くないのに……。



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