恋の神様はどこにいる?
「もう、うるさい。黙って。あっち行ってよ!!」
「おまえなぁ、誰に向かってモノ言ってんだよ」
「誰って、ここにはあなたしかいないでしょ。バッカじゃないの」
はは、言ってやった。バカバカ言った、昨日のお返し。
なんか言い返してやったら、胸の奥がスッキリした。もうここには用はない。
さっきしりもちをついた時に汚れたスカートの裾を払うと、ペコリと頭を下げる。
「では、失礼します。さようなら」
「お、おう、さような……って、ちょっと待てよ!! 何帰ろうとしてんだよ」
ガシッと腕を掴まれる。
「だってもう、ここには用事ないから。私は、あなたの名前が知りたかっただけなの」
「は? 俺の名前? なんでそんなの知りたかったんだよ」
「それは……。私はちゃんと教えたのに、あなたは誰なのかわからなくて。だから家に帰ってからも落ち着かなかったというか、頭にきたというか……」
「ふ~ん。俺のことが気になっちゃって、しょうがなかったんだ?」
「そこ違うから。あなたのことが気になったんじゃなくて、な・ま・え、だけ気になったの」
名前の部分だけ誇張して言うと、チェッと舌打ちする音が聞こえた。
「ホント、可愛げのない女。なあ、なんで野々宮さんなんて他人行儀な呼び方してんの?」
他人だからです。と喉まで出かかって、言うのを止める。