恋の神様はどこにいる?
境内へ行くと、竹箒で掃除を始めている志貴が目に入る。志貴の近くにはひとりのおじいさんがいて、よく来る参拝者だろうか親しそうに会話をしていた。
その顔はとても穏やかで、志貴でもこんな顔するんだと見入ってしまう。
会話をしながらも掃除の手を休めることはなくて、志貴の意外と真面目なところに感心していると、私に気づいた志貴が手招きをした。
「絃さん、紹介するよ。今日から巫女として奉職した真野小町さん。こちらは近所に住む氏子の千田絃二郎さん」
「初めまして、新人巫女の真野小町です。今後ともご指導のほど、よろしくお願い致します」
「はいはい。こちらこそよろしくね。志貴くん、なかなかの可愛い子ちゃんじゃないか。私がもう少し若ければ、彼氏に立候補したいくらいだよ」
「何言ってるんですか。絃さんには、素敵な奥さんがいるでしょ!!」
「ははは。志貴くんがムキになるところを見ると、この子は志貴くんのコレかね?」
絃さんはそう言って小指をピンと立てると、志貴の前に差し出した。
今どきのお年寄りは侮れない……。
でも私が志貴の彼に見えるのは、ちょっと嬉しかったりして。
「げ、絃さん、勘弁してよ。なんでコイツが彼女になるわけ? ないない、絶対ない」
嘘。まさか、そんなに必死に否定するなんて。ちょっぴり嬉しかった気持ちが、一気に萎える。