恋の神様はどこにいる?

「小町ちゃん、お疲れ様。いい舞いだったよ」

巫女の控室に千里さんがやって来て、私の頭をポンポンと撫でた。

「千里さん。そのポンポン、止めないですか? 子供じゃないんですし……」

いつものこととはいえ、子供扱いされているようで。そう言って口を尖らすと、またポンポンと撫でられてしまうからお手上げ。

「兄貴、また小町にちょっかい出してんのか? 前から言ってるように、小町は俺の……」

「彼女になったんでしょ? はいはい、お兄ちゃんはおとなしく身を引くことにするよ。ああ、この後の披露宴だけど。小町ちゃんも出席するよね?」

「はい、お言葉に甘えて」

「そっか。じゃあ後でね」

千里さんが部屋を出て行くと、志貴とふたりっきりになる。

途端に朝のことを思い出してしまい、何となく気恥ずかしい。

「今晩だけど」

「う、うん」

「披露宴の途中で、バックレるぞ」

「うん……えぇっ!? バックレるって、ドロンしちゃうってこと?」

「ドロンッて。おまえ、歳ごまかしてんだろ?」

いやいや。その歳でバックレるって言う方が、おかしいでしょ!!

でもそこが志貴らしいと言えば、志貴らしくって。それもいいかなと思ってしまう。

「一度、家に帰るんだよな?」

「うん。ちゃんとした格好に着替えたいし」

「じゃあ、後で迎えに行く。支度できたら電話しろ。それと」

志貴はそこで言葉を止めると、意味深にニヤリと微笑んだ。



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