恋の神様はどこにいる?
「ねえ、ちょっと。そろそろ腕、離してくれない。私はあなたに捕まる理由はないの」
「志貴」
「はい?」
「俺の名前は志貴って言っただろ。志貴って呼べ」
「はあ!?」
なんで私があんたのこと、名前で呼ばなくちゃいけないの?
まだ昨日会ったばかりだよ? しかも私はもう二度とあんたに会いたくなかったのに。いきなり“志貴”なんて呼べるわけないでしょ!!
この、すっとこどっこい野郎が!!
「志貴。はい、リピートアフタミー?」
はぁ、頭痛い……。英語の先生にでもなったつもり? 私は絶対に呼ばないんだから。
「強情なヤツだなぁ。俺はおまえのこと小町って呼んでんだから、おまえも志貴って呼ぶべきだろ」
「それはそっちが勝手に呼んでるだけで、私は許可した覚えないんですけど」
「許可? そんなのいらん」
何なんだ、コイツは。
何を言ったって堂々巡り。終わりが見えてこない。
じゃあどうすればいいのか? 名前を呼べば解決? いつよ?
今でしょ!!
なんて、どこかの塾の教師みたいなこと言ってどうするのよ……。
私まで、頭がおかしくなってきた。
「……って、こんなのんびりしてる暇ないんだよ。ほら、行くぞ」
「はぁ? え? どこに?」
「どこでもいいんだよ。ついてこりゃわかる」
「え、ちょ、ちょっと志貴。離せ、コノヤロー!!」
「お、志貴って呼んだな。可愛い奴め」
呼びたくて呼んだんじゃなーい!!
こうして私はコイツのことを志貴と呼んでしまった上に、神社の裏手にある建物に連行されたのでした。