恋の神様はどこにいる?

「近頃の若い子にしては、肉付きがいいね。巫女の装束が似合いそうだ」

「あ、はあ……」

今のはけなされたの? それとも褒められた?

きっと後者だろうと勝手に決めると、意気揚々お婆ちゃんの言うとおりにひとつずつ身につけていく。

足袋を履き、左前で重ねて半襦袢をつける。

その上に白衣を羽織ると、腰紐を締めた。

「袴は帯が長いほうが前で、ヘラが付いてるほうが後ろだからね」

お婆ちゃんにそう言われると、確認してから袴を履く。するとお婆ちゃんは手際よく帯を締めていき、前側に持ってきた帯をギュッとチョウチョ結びにしてみせた。

「はい、完成。そこの鏡で見てごらん」

「はい。ありがとうございます」

自分の姿を、鏡に映し出してみる。

「わぁ……これが私……」

そこには普段の私とは全然違う、清楚な女性が立っていた。

「馬子にも衣装だな」

「え?」

部屋の入り口から突然聞こえてきた声に振り返ると、志貴がニヤリと腕を組み壁にもたれて立っている。


「驚いたよ。化ければ化けるもんだな」

「化けるって、人をお化けみたいに言わないでくれる」

「じゃあ可愛い」

「はあ!?」

か、か、かわいーい!?

どうしちゃったの、コイツ? どっかで頭でもぶつけた? それとも熱でも出ちゃったとか?



< 28 / 254 >

この作品をシェア

pagetop