恋の神様はどこにいる?
「近頃の若い子にしては、肉付きがいいね。巫女の装束が似合いそうだ」
「あ、はあ……」
今のはけなされたの? それとも褒められた?
きっと後者だろうと勝手に決めると、意気揚々お婆ちゃんの言うとおりにひとつずつ身につけていく。
足袋を履き、左前で重ねて半襦袢をつける。
その上に白衣を羽織ると、腰紐を締めた。
「袴は帯が長いほうが前で、ヘラが付いてるほうが後ろだからね」
お婆ちゃんにそう言われると、確認してから袴を履く。するとお婆ちゃんは手際よく帯を締めていき、前側に持ってきた帯をギュッとチョウチョ結びにしてみせた。
「はい、完成。そこの鏡で見てごらん」
「はい。ありがとうございます」
自分の姿を、鏡に映し出してみる。
「わぁ……これが私……」
そこには普段の私とは全然違う、清楚な女性が立っていた。
「馬子にも衣装だな」
「え?」
部屋の入り口から突然聞こえてきた声に振り返ると、志貴がニヤリと腕を組み壁にもたれて立っている。
「驚いたよ。化ければ化けるもんだな」
「化けるって、人をお化けみたいに言わないでくれる」
「じゃあ可愛い」
「はあ!?」
か、か、かわいーい!?
どうしちゃったの、コイツ? どっかで頭でもぶつけた? それとも熱でも出ちゃったとか?