恋の神様はどこにいる?
私は池の鯉のように、口をパクパク開けては閉じるを繰り返すばかり。
「なんだよ。言いたいことがあるなら、さっさと言え。なければその顔どうにかしろ」
どうにかしろって。私をこんな状態にした張本人が、何を偉そうに。
言い返してやりたいのに言い返せないもどかしさが入り混じり、私の中の何かがパチンと音を立てて弾けた。
「ああぁ~もうっ!! 志貴なんて大っ嫌い。人の顔のことなんて放っといて。雅斗さん、ビールジョッキでもう一杯!!」
大声でそう叫ぶと、雅斗さんが驚いた顔を見せた。
もうこうなったら、とことん飲んでやる!! どうせ志貴の奢りだもんね。『頼む。もうそのへんでやめてくれ』って志貴が頭下げるまで飲んでやるんだから!!
「ふ~ん、大っ嫌いね……」
ひとり憤慨している私の耳に、かすかに聞こえた志貴の声。でもそれは私の意に反して、愉しげで余裕のあるものに感じられた。