恋の神様はどこにいる?
「おい兄貴。前にも言ったろ、コイツは俺の……」
「俺の何? 彼女じゃないんでしょ? だったらやっぱり、志貴にとやかく言われる筋合いじゃないと思うけど?」
「それはだな……。ああ~もう勝手にしろ!!」
「ああ、言われなくても勝手にするよ。志貴はまだ仕事がたくさん残ってるんだよね? 午後からは確か、地鎮祭だったような」
「いちいちうるさいな。そんなことはわかってる。小町、兄貴はな、優しい顔してるかもしれないけど、羊の皮を被ったオオカミだから気をつけろ。俺に話があってここに来たんだろ? だったらさっさと帰って家で待ってろ。仕事が終わったらすぐ行く」
な、な、なんですか!? このふたりのやりとりは!!
これじゃあまるで、志貴と千里さんが私を取り合いしてるみたいじゃないの!!
いきなり修羅場ですかぁ!?
まあ何となく、千里さんのほうが上手なような気がするけど。
私はといえば、まだ千里さんの腕にがっちりホールドされていて、身動きひとつできない状態で。
でも志貴の声色から、眉間にしわを寄せて怒っている顔が容易に想像できてしまい、千里さんからどうにか少しだけ身体を話すと小さな声で「わかった」とだけ答えた。