恋の神様はどこにいる?

また千里さんとふたりだけになってしまった休憩室。

「やれやれ。全く志貴には困ったもんだね」

いやいや。困ったもんなら、千里さんだって負けてないですよ。

心の中で呟くと、少し苦しくなってきた千里さんの腕の中でモソモソと身体を動かす。

「ああ、ごめん。いきなり抱きしめて、悪かったね」

千里さんは私の身体を開放すると大きく肩で息をつき、椅子にドカッと座った。

「千里さん。なんで私を、抱きしめたりしたんですか?」

「ん? それは前にも言った通り、小町ちゃんが可愛くて」

嘘。それは100%違う。

前回の時はどうであれ、今の千里さんからは何も伝わってくるものがなかった。

力強く抱きしめられてはいたけれど、それは私に向けられた思いじゃなくて、志貴に対しての当て付け? とでも言ったほうが正解に近いような気がする。


千里さん。あなたは一体、何を考えているの?───


千里さんの顔を窺い見ても、もういつも通りの笑顔になってしまっている彼からは、何も感じ取ることはできなくて。

同じことをもう一度聞いたって、きっと本当のことは話してくれないだろう。




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