☆You☆

中学2年の夏



悠太から地元の花火大会に行こうと
誘われた




私は 自分で選んだ浴衣を
母に 着せてもらった


黒地に 少しだけ 裾に入った
ピンクの薔薇の模様の浴衣


帯を片流れ結びにしてもらい


髪は 左側に緩めのおだんごに
まとめて

ピンクの薔薇の髪留めを飾った





支度が できた頃 悠太がやってきた


「こんばんはー」


下駄を履きながら 玄関を開けると


玄関先には 浴衣姿の悠太が
立っていた

見慣れない悠太の浴衣姿


凄く ドキドキした


「尚ちゃん 可愛い」


悠太が 顔を赤くしながら 私に言った

私まで 顔が赤くなる



私は 自分の照れをごまかすように

「はいはい 悠ちゃん 誉め上手だから」

と 茶化してみた


花火大会が開催される 地元の大きな
グランドまでは 歩いていける距離


いつものように 前を歩く
悠太のすぐ後ろに 私は いた


いつもと違う 浴衣姿の
悠太の背中を 見つめながら



夕暮れ時
花火大会に向かう人が
グランドまでの道に 溢れていた


「尚ちゃん」



悠太は 後ろの私に 振り返りながら
私の名前を呼んだ



そして
自分の左手を 私に 差し出しながら



「尚ちゃん手つなご」と

悠太は 照れながら 私の手をつないだ



花火大会の会場は 早い時間から
すでに 多くの人に 場所取りされている



「尚ちゃん 少し歩くけど 俺 花火見える
場所聞いてきた そこ行こう」


悠太は

私を離さないように はぐれないように

私の手を 強く握って歩いた



グランドの裏手にある
短い林道を抜けて 坂道をしばらく歩き

途中の住宅街の細い道を抜けた場所に

私の知らない 丘の上の公園があった


その公園は
市街の夜景も見える 場所だった


< 30 / 127 >

この作品をシェア

pagetop