愛情の鎖
「あ、あの……」
「誰だ」
「えっと……」
何だかさっきよりも声がかすれてる?
いつもに増して感情のない声に、少しビクついた私。
「あの、わたし、私だけど……」
そのせいで上手く言葉が出てこなく、自分の名前すら言えなかった。
「私……」
「ふっ、流行りの詐欺かよ」
「えっ?」
「つか、この俺を騙そうなんていい度胸してんじゃねーか。どこの組だ?この俺が誰だか分かってやってんだろうな?」
そう言われ、私はたちまちベッドから立ち上がって慌てだす。
「ちっ」
違う違う!
そーじゃなくて!
1人しか居ない寝室で、手をバタバタさせながら「なんでそうなるの!?」とあわあわと狼狽える。
「べ、つに怪しい者じゃっ」
「くっ、慌てすぎだ。冗談だ。分かるよ。梨央なんだろう?」
「へっ……」
優しい口調に変わり、ピタリと動きを止めたのはいいのだけど、通話口から聞こえてくる笑い声。
「またからかわれた?」そう感じた瞬間、むむっと眉間に皺が寄りそうになった。
「もう!」
「相変わらずからかいがいがある奴だな」
「ひどい!せっかく心配して電話したのに!心臓が止まるかと思った」
コウさんのバカ!
ドキドキして損したじゃない。
さっきまでの私のモヤモヤを返してほしい。