愛情の鎖
ほっとくよ。
ほっときたいよ。
……なのに、電話を耳に当てたまま駆け足で屋上の階段を登っていく自分がよく分からない。
本当世話がかかる…
そう思いながら、コウさんに余計なお世話をしようとしてる私もまたとても厄介な性格かもしれない。
「ほら、計って!」
柵を飛び越えた私は一直線にコウさんの元へ。ベンチに座る彼と向かいあうと、持ってきた体温計を少しキレ気味に突き出していた。
「早く」
「…お節介……」
「さっきより声が枯れてる人に言われたくないよ」
「はいはい」
ふぅ….と、息を吐いたコウさんが渋々といった様子で体温計を受け取る。
やっぱりさっきよりも顔色が悪い。
いつもと変わらず淡々とした口ぶりだけど、きっと体はしんどいんじゃないのかな?
ピピピッ…と音がして私はコウさんが取り出した体温計を覗き込む。
「ほらぁ、やっぱり熱あるんじゃない!」
38度2分って、けっこうな高さだよ。
言わんこっちゃない。
「ご飯は食べたの?」
「さっき適当にパンかじったぐらい」
「それって食べたって言うの?」
ダメだ…
適当すぎてこっちがクラクラとする。