愛情の鎖

「…コウさ……」

「梨央、あんま変な虫に刺されんなよ」


そう言って落とされたのは、痺れるような熱い囁き。

耳元で響いたコウさん真剣な言葉に私は「…えっ……」と、涙目になった瞳をパチッと開く。


「……たくっ、どんだけ独占欲が強い野郎だよ」

「…へっ……」

「まじで胸くそがわりぃ、つーか癪だ」


そう言ったコウさんが呆れたように胸元にも……キス。

それから数ヶ所同じように甘い痛みを付けたと思ったら、満足したのか、彼はそのあとようやく私の上からゆっくり退いた。


「安心しろ、元々あった場所以外は付けてねーから」

「えっ……」

「今、この状況であの男を発狂させてもあんまいいことねーからな」


その言葉にハッとする。


それって……

その時、ようやく今までの意味不明な彼の行動と言葉の意味をはっきりと理解した。


「あ、違っ……」


そして顔からサーと血の気が引いていく。

さっきまで感じていた熱い火照りが嘘のように急激に冷えていくのがわかった。


「ち、違うのっ、これは、別に宗一郎さんとは……」


"してない"


そう叫びたかったけれど、その言葉は口の中で不発に終わる。

どうしてか、上手く言葉にすることができなかった。

だって、きっと今何を言ったって全部言い訳にしか聞こえない。

こんなあからさまな痕を目の前をして、宗一郎さんとは "してません" だなんて、到底無理な話なのだ。

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