愛情の鎖
私は少ししてゆっくりと起き上がった。
すると左手からガタリと何かが床に落ちる音がした。
それに目を向けた瞬間、何故か無心になり、無意識に「ふっ…」と鼻から笑いに似た息が漏れた。
それは先程宗一郎さんから渡された拳銃で、私はそれを拾いあげると無表情のまま立ち上がった。
そして乱れた服装を整えると何を考えるわけもなく、フラフラと屋上へ続く階段を上がっていた。
正直今何時なのかは分からないが、直感的に真夜中だってことは外に出てからすぐに分かった。
静寂な空の中にちらほらと微かに星が浮かんで見える。
当たり前だけどそこには誰の気配もなく、シーンと静まり返っていて私は少し肌寒い中、いつものように屋上の奥のフェンスまで進んだ。
足元には間接照明の淡い光。まるでその優しい光がなやましく私をこっちにおいでと導いてくれてるようだった。
だから私は、真っ直ぐ思うままに前に進んだ。
ガシャン…
フェンスに左手を伸ばすと、私はゆっくりとそこから見える夜景を見下ろした。
最上階から見える最高の景色はいつ見ても変わらないけれど、私の心はひどく変わったような気がした。
そんな宝石を散りばめたようなそれを無表情で見下ろしながら、私はか細い声で口を開き、そっと喉を鳴らす。