愛情の鎖
それから俺は時間を見つけては、何度か澤田梨央と接触を繰り返した。
それと同時に彼女の行動パターンを把握する。
基本彼女は家に居ることが多かった。派手に外出することもない。
出掛ける時は必ずと言っていいほど下っぱの金髪の男がまとわりついている。
だから自然的に彼女とゆっくり顔を合わせられるのは、夜中の屋上に現れた時だった。
そして分かったことが一つだけ。彼女は毎晩同じぐらいの時間になると現れた。そして決まって誰もいない夜空に向かって声を響かせるのだ。
切なく、今にも泣き出しそうな声で…
「よぉ、今日も暇そうだな」
「…あ、コウさん。…こんにち、は……」
ただ、彼女のガードは固かった。
予想以上の警戒心で、俺を受け入れようとはしない。
一定の距離を置いて、今日も彼女は俺に対してよそよそしい態度を向ける。