愛情の鎖

そして熱い視線が絡み合う。


「言っとくが俺は病人に手を出すほど飢えてねー」

「……ん」

「だけど、今のお前見てると無性に触れたくなるのはどうしてだ」

「それは……」


コウさんも私が好きだから?
そう告げればやっぱり優しく笑い、「生意気だ」と鼻をつままれた。

そしてまた熱くしとやかな沈黙が私達を包み込む。

だけど、それはほんの数秒だった。

ふっと息を吐き、私から視線をそらしたコウさんがゆっくりと立ち上がる。


「悪いがこれ以上はしない」

「えっ……」

「まだお前を抱かねーよ」


悪戯に口元を上げ、そう告げる。


「俺は好きなものは最後まで残しておく主義なんだよ」

「??」

「それより今は先にやることがまだ沢山あるからな」


そう言ったコウさんの顔はなんの戸惑いもなかった。

むしろ強い意思に包まれ、しっかりとした決意さえ感じるほど。

そしてその言葉は私の為だってことぐらい、鈍い私でも痛いほど感じるわけで、

それはコウさんなりのけじめ。



「たくっ、ガキんちょが一丁前に色気づいてんじゃねーよ」


向けられた顔は誇らしく、だけどやけに鼻につく言いかただったから、それがやけにコウさんらしくて、私はふっと笑みをこぼしてしまった。
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