愛情の鎖
「なんだか考えても一向に答えが出ないっていうか……」
「ま、それでいいんじゃねーの?」
「えっ?」
「人生なんてそんなもんだろ」
そう言ったコウさんはやけにあっさりとしていた。
少し以外だったのはこんな唐突な質問にもちゃんとしっかりと耳を傾けていてくれるということが嬉しくて。
「答えなんか出ないのが普通だろ?」
「そう、ですかね?」
「世の中なんて所詮曖昧でできてんだよ。簡単に答えが出るもんなんてものがあればそれこそ胡散くせぇ」
「じゃあ、コウさんはどっちもいらないんですか?幸せになりたいと思わないの?」
そう告げた私はコウさんの胸から離れ、思わず顔だけを上げた。だってコウさんらしい発言と言えば発言だけど、どうにもあっさりしすぎていてつまらない。
…すると、そうかと思えば目の前の口許が何故かふっと意味深に歪み始める。
「まぁ、強いて言うならその逆だな。俺だったら愛も金もどっちも手に入れる」
「はっ?」
「どっちも必要なんじゃね?」
なんですかそれは…
言ってることが矛盾してる気がするんだけど…
「つーか、梨央は幸せになりたいわけ?」
「そりゃまぁ、そうなりたいにこしたことはないですけど…」