愛情の鎖

「行かなくていい」

「え?」

「これは俺が貰う」


ビックリして振り返ると、眉間に皺を寄せたコウさんがヒョイっと隣から奪ってしまった。
「えっ」と目を見開きその行動に動きを止める。


「ちょっ…」

「たくっ、あのコンシェルジュ…、やることも胡散臭いんだよ」


そんな事を言って眉間に皺を寄せる姿はやっぱり不明で、私は何がなんだか分からない。でも…


「まぁ、いい。気分は悪いが買いに行く手間が省けたからちょうどいい」

「えっ……」


買いに行く手間が省けた?

ちょうどいい?

何を言っているのか分からなかったけど、でも、ふとコウさんが前髪をかき上げながら「ふぅ」と重く息を吐く姿を見た瞬間、その全ての意味にハッと気が付いてしまった。


「もしかして、風邪ひいてる、の?」


体調わるいの?

そう尋ねればかえってきたのは曖昧な返事。


「さあな」

「コウさ……」

「ほら、さっさとお前も自分の部屋に帰れば?嫌味で無神経なおっさんなんかに構ってると、ろくなことがねえぞ」


そう言われ、背を向けられたけど、どうしてかその場から動く気持ちになれなかった。

だって、よく見たらいつものコウさんより歩き方がダルそうに見える。

何で気付かなかったんだろう。

さっき腕を掴まれた時、思い返せば確かに少し熱かった。

ような気がしたのに…
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