愛情の鎖
今日はいつもに増してコウさんが意地悪だったからその異変に気付けなかった。
ていうか、分かる方がすごいんだけど…
「ちょっと待って!」
私は遠ざかって行く背中に向かって気づいたら追いかけていた。
やっぱりこれは母親の血?
風邪って聞くとそれが誰であろうと途端に心配になっていまうのは。
「ほら、やっぱり熱いよ」
立ち止まったコウさんに追いつくやいなや彼の額にサッと手を当てていた。
うん、間違いない。
伝わってきたその熱さにやっぱり核心を得た私は真剣な顔を向ける。
「大丈夫?今から病院に行った方がいいんじゃない?」
少し驚いた表情をしたコウさんが私を見る。その瞳はやっぱりどこか熱っぽい。
だけど、彼はすぐに額から私の手を取るとさっきと同様、とてもクールな口調でこう言った。
「別に病院に行くまでもない。こんなもんは一晩寝たら治る」
「でも……」
「大袈裟すぎだ。梨央、お前はいつからそんなにお人好しになったんだ?第一嫌いな奴の心配なんてしてんじゃねーよ」
「それは…」
別に本心じゃない、のに…
あの時は売り言葉に買い言葉っていうやつで、何も私は本気でそんなことは思ってはないよ。