愛情の鎖

むしろコウさんには親しみさえ感じ始めているから厄介なのに…


「ほら、さっさと自分の家に入れば?それともあれか、そんなに言うんなら俺にお粥の一つでも作ってくれるわけ?」

「えっ」

「このまま俺んちに来て看病でもしてくれんの?」


鋭い瞳で真っ直ぐ見つめられ、思わず喉の奥で言葉が止まる。

さすがに難しい問いかけだった。

コウさんのことは心配。だけどそこまでの間柄じゃない。

最近顔をよく合わせるただの隣人で、それ以上の事をしてもいいのかも分からない。

第一私には宗一郎さんがいるし、一人暮らしの男の人の家にのこのこ上がりこんでいい身分でもない。


「ふっ、押し黙るぐらいなら最初から下手な同情はやめとけよ」

「……」


何よりこんなことが宗一郎さんにバレた時のことを思うと怖くてたまらなかった。


…なのに、この不安定な気持ちは何だろう。

再びコウさんに背を向けられた時、いいようのない寂しさが込み上げた。

急に気分がモヤモヤとして、心臓にずしりと重りがはりついたような違和感。


「じゃあな、あんたも油断して風邪引くなよ」


遠ざかっていくコウさんを何も言えないまま、その姿を追っていく。

妙にイライラとした。

私はいったい何がしたかったんだろうって。

ヒシヒシと後ろ髪を引かれる気持ちは何?
この時初めて自分でもよく分からない感情と戸惑い、煮え切らない思いを感じ始めていた。
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