下町退魔師の日常
 小さい頃から、お互いに減らず口を聞いてきた仲だったけど。
 あたしは、シゲさんが倒れないように支えているミッキーの左手の薬指にチラリと視線を送る。
 シンプルだけど、飽きが来ないようなデザインの指輪が光っていた。
 ミッキーこと幹久は、今年の1月に挙式したばかりだ。
 まだ4ヶ月、新婚ホヤホヤだ。
 ったく、そうやってみんな幸せになりやがって。
 チッ、と横を向いて小さく舌打ちする。


「何か悪い事したか、俺?」


 ヤバい。
 見られてた。
 怪訝な顔をしてこっちを覗き込む幹久に、あたしは慌てて作り笑いを浮かべて。


「何でもない、何でもない。シゲさんの事、任せたよ。早く帰らないと詩織ちゃんが心配するよ」
「何でだ? 松の湯に来るって知ってるのに、詩織はそんなことくらいで怒ったりしない」


 はいはい、そうですか。
 ま、ミッキーはそれなりに整った顔立ちなんだけど・・・天然てか、空気読めないってか。
 昔からそうなのよね。
 でも、いいヤツ。
 幹久を選んだ詩織ちゃんは、大正解だったと思う。
 彼女は青森出身で、地元の大学を出てからすぐに上京して就職、その当時実家を出て商社マンしてた幹久と知り合い、3年付き合ってから結婚。
 あたしより2つ年下とは思えない程落ち着きがあって、控え目でしおらしい。
 まさに、一歩下がって旦那様に着いて行くタイプ。
 世の男達の8割は、そういうヤマトナデシコが好きなんじゃない?
 あたしとは全く正反対だ。
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