【短編】 ベテルギウスの幻影〜最初で最後のkiss

長い間、独身を貫いてきた城島君が1年前に結婚した。


城島君の左手薬指にあるのと同じデザインの指輪を売店の女の人がしているとわかった時、私はショックのあまり、その人に意地悪をした。


コーラのカップをひっくり返して、カーペットを汚したり、ポップコーンの機械を調子悪くしてやったり。


でも、その人は、いつもにこやかで穏やかで。


彼女の性格の良さがわかってからは、イタズラをやめた。








こちらを向いて目を閉じたまま、身じろぎひとつしない城島君。


いつの間にか、白髪が目立つようになったね。


すっかりナイスミドルになっちゃって。


でも、昔の面影は充分ある。

陰影のついたハーフっぽい顔立ち。


思い出すわ。一緒に観たよね。

『風と共に去りぬ』

『理由なき反抗』

『ティファニーで朝食を』


昔のオデオン座は、よく外国の名画を演っていた。


輝かしい全盛期の時代。

きらびやかなスター達。


グレタ・ガルボ、、モンロー、ジミー・ディーン。ゲイリー・クーパー。

お気に入りは、妖精みたいなO.ヘップバーン。




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