妄想世界に屁理屈を。

“消えるとは文字通り消える。所謂自殺。悪霊はこの世に存在をもがいた挙げ句に成ってしまうんだ”


それはまるで、使い捨てみたいじゃないか。


いらなくなったら自殺をするか悪霊になるか。

そんなの、選びっこないし――俺ならまず主を恨んでるだろうな。


「…ミサキくんは、どうするつもりだったの?」

「吾の主の仕事は悪霊と妖怪退治。煩わせたくないと考え、自殺を決めました」


当たり前だと言わんばかりに、淡々と。


無表情なのが、すごく悲しかった。


スズにこんなに愛されてるのに、自殺なんて簡単に決めてしまう彼が、どうしようもなく悲しかったのだ。


「黒庵さまに話しかけたとき、黒庵さまに完全に無き物扱いをされました。吾は捨てられたのだと確信し、山にこもり儀式を行い、自害の準備に取りかかっていた際に、宮下殿がやってきたのです」


山にこもっていたのが幸いしたのだ。


天狗は山の神さま。


見つけるのはそう難しくはなかっただろう。

だから二三時間でつれて来られたのだ。



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