妄想世界に屁理屈を。

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「『愛してるなら私をきって』かぁー」




容赦なく私の歴史を割いてくる彼女に、辟易した



「………帰り道はこっちじゃないですよ、池から帰ってくださいね」


なぜか私の書斎に入ってきた天探女に注意すれば、にっこりと笑われた。


「その前にあんたの十字架を軽くしてあげようと思ってぇー
ほら僕一応恋のキューピッドだしー」


お風呂上りでホカホカしている天探女。

戦って汚れたからお風呂を貸して欲しいというから貸したのに、まだ居座ってるのかぁ

害なさそうだし入れてもいいかと思ってた私が間違いでした。



「読んだんですね、勝手に私のことを」

「恋のセンサーがビンビンしちゃったんだよ〜」


怒ろうかとも思ったけど、彼女の能力がうんでしまったこと。

仕方ないかと思い直し、こんどは口止めにまわる。



「…子供たちには言わないでくださいね」


「それを願ってるのも読んでるから大丈夫だよー、その思いがどれだけ強いかも」


そう言って勝手に座りながら顎を足の上に乗っけて、私をじっと見つめた。



「…で、切ったんだー」


「はい、それが彼女の最初で最後の願いでしたから」


無理やり笑えば、向こうも笑い返してくる。

いつもの意地悪そうな笑みではなく、慈しむような笑みで。



「似てるよねー、ぼくとアンタ」

「かもしれませんね」


愛する形は人それぞれ

それは神様だって人間だって変わらない


変わらず、切なくて辛くて、それでいて美しくって


「あなたと同じく、私も後悔なんてしていません

あの人を一一白龍である永龍を切ったから鳳凰(今)があるんですから」


まあ、思い出になって仕舞えば、みんな美しいのかもしれない


「そうだよねー」


ふふふ、とやけに女っぽく笑いながら。



「ねぇ一一神と人間って何が違うと思う?
神々の最高神」


「さあ、私はどちらも変わらず愛しいですけれどね」


アンタらしい回答だな、と笑われた。
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