妄想世界に屁理屈を。


「まー、そーゆーわけ。なにか質問は?」


「ないわけないじゃない」

たくさん、聞きたいことはあった。


この腕に絡みつく髪の毛一一しかも真っ白なこれ、一体誰のものなのか。

なんで私だけ隔離するのか。

だけど、まず。


「アカネ様たちは?ご無事でしょうね」


「自分のことより主か。えれーな。俺信じらんねーわその従順さ」


ため息をついて、うーんと悩んだ。

「まだ無事じゃね?わっかんね。俺赤龍に『こうしろ』としか言われてないから」


頼りにならなかった。

「死んでたら連絡来るもん。死んだよーって。今何の連絡ないしな」

やけに軽いが、無事とのことで安心した。

これで気兼ねなく聞ける。


「じゃあ次」

吸いづらい息を吸って。


「一一私をどうしたいの?」


一気に聞いた。

細々聞いてたら切りがなさそうだし。

「じゃあ俺様からも質問」

「え?」

「お前一一自分のことどれくらい知ってるんだ?」


どくん、心臓がいやな音を立てる。

背筋がぞっとする。

何を聞かれてるのか一瞬わからなくて、それから怖くなった。


「どれくらいって…」

「チビ、お前何も知らねーんじゃないの?」

「そんなこと」



「“気がついたら”。そんな生き方してる連中は、自分のことをぜーんぜん知らねーもんだ」


瞠目する。

目の前のこの男が急に怖くなった。


“気がついたら”


それはまさに私そのものだった。

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