妄想世界に屁理屈を。
「私は、彼女を愛してた。だから、出来ることなら忘れたいとさえ思ってました」
忘れたい、なんて。
そこまで言う彼の心中は、俺が想像するよりずっとずっとずたずたで。
何も言えずに、ただ驪さんの心が晴れることを祈るしかない。
「私、私は……」
言葉を必死に探すかれに、誰もが目を丸くしていた──そのときだった。
ドガン、と、破壊音が広がった。
何事かと思えば、赤龍の背後の岩が崩れた。
ガラガラと崩れ、視界が何も見えなくなる。
何事かと、目を凝らせば──何かが暴れていた。
緑とも茶色ともつかない、不思議な色合いをした、悪くいえばドブのような色。
大きすぎるからか、うじゃうじゃというよりわらわらといったかんじだった。
一つが俺の体の5倍くらいのそれらが、
周りの壁を破壊しながら、もう洞窟ではなくなるくらいに粉々にしながら、こちらに近づいてくる。
「な、なんじゃあれ!?」
「うわわぁああくるくるくるくるにげなきゃやばいって!」
“でっけー!かっけー!”
鸞さんが普通に悲鳴を上げ、俺はぎゃあぎゃあ怯え、アカネが戦隊ヒーローを見つけた子供みたいにはしゃいだ。
「──ヤマタノオロチです鸞さま!!」
苑雛くんがそうさけび、逃げようと身じろぐ。
しかし縄で縛られていて、どうにも動けない。
それはみんなも同じ。このままではヤマタノオロチに殺されてしまう。
「黒庵!な、なんとかならないのか!?」
「……ちっ、とれねぇ……」
「あほー!お前の馬鹿力は肝心なところで役立たずなんじゃから!」
そんなおりにも、ばっかばっかと破壊しながら奴は近づいてくる。
「うわぁあんっ死にたくないー!」
「おねーさん!こう、寝っ転がってゴロゴロ行けばちょっと動ける!」
ペタンと寝っ転がってゴロゴロとうまいこと芋虫のまま移動できる術を教えてくれる。
必死な俺はそれをしようと横たわり、せーのと勢い付けようとして。
凄まじい勢いで体スレスレのところで切れ味の良さそうな刃物的な何かが降ってきた。
「うわぁああああっ」
「あらやだぁ、動かないでよぅ」
足元に高いヒールが見える。
俺にまたがるようにして、オネェが鎌を地面に突き刺して立っていた。