この空の下で
 父さんは少し照れくさそうな声で言った。

「…じゃ、要、深雪呼んで」

 そう言い残すと、母さんはテーブルの上の皿を持って、キッチンへと入っていった。

 そして僕は廊下に出て、階段下から深雪のことを呼んだ。すると、深雪は驚くべき速さで部屋を出て、階段を駆け下りた。まるで階段の上から待っていたように。僕はその深雪の速さに見とれていた。

「何、どうしたの」

 深雪はしてやったりといった表情を見せた。

「なんでもない」

 僕はそそくさと、暖かい光が漏れる居間に入っていった。

 夕飯の準備は過ぎており、父さんと母さんはすでに席に着いていた。どうやら二人は見えないところで仲直りをしたようだ。こういう特別な日には、特別な効用があるらしい。そして僕と深雪は急いで自分の席に着いた。

「じゃあ、食べよ」

 キッチンの奥で、静かに電子レンジ音が鳴っている。しかし外は風も吹かず、温かい家庭を見届けているように静かであった。

 そして家庭は一つになった。

「いただきます」
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