この空の下で
嫉妬
 いつか分からないが、二ヶ月に一度、家に訪問客が来る。そういえば、こうやって定期的に来るようになったのは、いつからのことからか分からない。父さんが言うには、彼女は父さんの小学校からの旧友で、今でも世話になっているらしい。しかし旧友であるのなら、なんで他の人も連れて来ないのであろうか。私はなぜだか彼女のことが気になってしょうがない。母さんも父さんと彼女が楽しく話しているのを見て、何だかやきもちを妬いているらしく、その時だけ可愛く見えた。そういえば、その彼女がそろそろ来る時期だ。そして母さんの嫉妬も、また芽生え始まることであろう。


 ピンポーンとチャイムの音が鳴り、父さんは玄関のドアを開けた。

「よぉ、もうそんな日か。いい加減、もう大丈夫だと思うんだけどなぁ」

「だめよ。あと二年だから我慢して。そうしないと…だから。あと少しの辛抱だから」

「分かった、分かった」

 そう言うと父さんは彼女を中に招き入れた。そして慣れた手つきで、居間に通した。


 居間では何だか楽しそうな笑い声が飛び交っていた。その時私と母さんは、廊下でその会話を盗み聞きしていた。普通ならこんなことをするのは、人間として恥ずかしいことだとは思うが、やってて楽しい。

 私は二人の話にずっと耳を傾けていたが、上から母さんの声が聞こえた。

「深雪、見てきて。お願い」

 母さんは私の顔を見ずに、一生懸命に二人の話に耳を傾けて話した。

 私はその言葉に従って、しぶしぶ居間に入っていった。その時母さんは、ドアから自分の姿が見られないように、壁にへばりつくように隠れた。

「こんにちは、葵さん」

「ああ、深雪ちゃん。久しぶり。元気にしてた?」

「はい、おかげで」

 彼女の名前は葵。保育園に勤めているらしく、彼氏もいる。そして父さんの小学校の頃の旧友で、久しぶりにこういう形で再会を果たしている。

 私はとりあえず、母さんの聞きたそうなことを聞いてみた。

「で、今日は、なんか…遊びに来たの?」

「こら、深雪」

「いいのよ。そうね…そんなところ、かな」
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