廊下に置いてある洗濯機に、溜まりに溜まった洗濯物を投げ込んでいた。
ふとお気に入りのワイシャツを見ると、ボタンが1つ無くなっている。

あぁ~あ。代わりのボタン買わないとなぁ…と仁志は考えなが洗濯機のスタートボタンを押した。

「ボタン…」

突然右側で誰かが呟いたため仁志はビックリして見た。
…ババァ…

「何か用っすか??」「……………………」
長い長い沈黙…ババァは仁志の目をジーっと見つめてくる。
仁志も負けずにババァの目を見つめ返す。
………………………。
そろそろ仁志に限界が来た瞬間、ババァが今までに見たことも無いような優しい目を見せた。

「あんた…寂しそうだね」

今まで、そんな事を言われた事が無かった。仁志は驚いてババァを見ることしか出来ない。

「家族は??」
「…いるけど、俺は別に家族から必要にされてないし。貧乏でもボロアパートでも、俺はここで一人の方が楽なんだ」

ババァは何も言わない。仁志も、何故ババァにこんな事を話しているのか分からないが、自然に言葉が出てきてしまう。

「ガキの頃から兄貴と比べられてきたからさ。俺は出来が悪いし。家に居ても居心地が悪いんだよね…」

と…ババァの方を見た瞬間…
…いないし…

こんなに語らしておいて…
「ババァ!!!」
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