いつもそうだった。
勉強でもスポーツでも、何をやったって兄貴には叶わなかった。

自分ではそんな事を気にしてたつもりはなかったけど…

顔を合わす度に言われる両親からの嫌味。

兄貴のバカにした態度。

家に居て安らぎを得る事は無かった。

東京に来た事に理由なんてない。
あの家を出られればそれで良かったんだ…。

仁志は起き上がると、洗濯機に向かった。
一枚一枚洗い上がった洋服を引っ張りだす。
…あれ??一枚足りない…無い…無いっっ!!

ボタンが1つ取れていた、お気に入りのワイシャツ…

無くなった…………
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