こちら元町診療所
処置室を通り抜けると明かりが診察室についていてまだ彼がいることが分かった私は足早に近付いて深呼吸をする

さっさと渡して帰るべし


右手でノックをしようとした手がギリギリの所で止まった



「(……………)」


誰かいる。



中から聞こえるのはヤツの笑い声と楽しそうに笑う知らない声


こんな風に……笑うんだ。

それを聞いて静かにおろした右手と共に私は事務室へと体を動かす


手にはお願いするはずだった病名出しのファイル


「はぁ……」


休み明けにやればいいか……

本当は今日渡したかったのにデスクに閉まってもう一度診察室の方を見る


帰ろう


タイムカードを押すと静かに鍵を締めてちょうど来たバスに乗り込んだ。

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