ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
私は一応は遠慮したのだけど、夜道の一人歩きは危ないからという事で、新藤さんに駅まで送っていただく事になった。


「はい、これ。肝心な物を忘れてるぞ?」


歩き出すとすぐに、そう言って新藤さんは私に紙袋を差し出した。私がポカンとしていると、


「忘れ物。君のブラウスさ」

「ああ、どうもすみません」


ブラウスの事はすっかり忘れていたけども、それを受け取ってしまうと、もう新藤さんのお宅にお邪魔する口実がないのよね……

そんな事を考えながら、今や完全に無駄になった大きなバッグにブラウスを入れていたら、


「悪かったね?」


と新藤さんがポツリと言った。何の事かなと思って彼の顔を見上げたら、


「今夜あたり来るかな、という予想はしてたんだけどね……」


と続く言葉を聞き、山田美沙さんの事を言ってるいるのだと私は気付いた。そして昨日の朝、私が忘れ物を取りに伺うと言った時、新藤さんが一瞬戸惑ったように思えた事を思い出した。

きっとあれは、山田美沙さんも来る事を予想したからなのだと思う。つまり、私と山田美沙さんが鉢合わせする事を予想したからだと思う。実際にそうなってしまったのだけど。


それにしても、山田美沙さんってどういう人なんだろう。親戚なのに苗字が違うし……

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