ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
その後、新藤さんは山田美沙さんについて説明してくれるかなと期待したのだけど、それっきり黙ってしまった。このままではすぐに駅に着いてしまうし、後になってからでは聞きにくい。という事で、思い切って私の方から聞いてみる事にした。


「あの……山田美沙さんって、どんな方なんですか?」


私は努めて明るい声で言い、新藤さんが答えてくれるのを待ったのだけど、なぜかそれがなかった。小さな声で言ったつもりはないのだけど、聞こえなかったのかしら。


そう思って新藤さんの顔を見上げ、もう一度聞こうとしたら、


「死んだ妻の妹さ」


新藤さんは、前を向いたままそう言った。聞こえてなかったのではなく、言いたくなかったのだと思う。亡くなられた奥様に関係する事だから。


「そうですか……」


私はもう、これ以上は聞かない事にした。きっと新藤さんが、辛くなってしまうと思うから。ところが、


「妻の親族とは絶縁状態なんだが、美沙さんだけは例外でね。時々まみの子守りを買って出てくれて、僕も他に頼める人がいないものだから、つい彼女を頼ってしまうんだ」


と新藤さんは話してくれた。でも、その声がいつものそれとは違い、無理に絞り出したみたいで苦しそうで、私は「そうなんですか……」としか言えなかった。

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