ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
そして駅に着き、新藤さんは改札の手前まで私を見送ってくれた。


「悪かったね?」

「いえいえ、とんでもありません。こちらこそ、ご馳走さまでした」

「ご馳走ってほどの物じゃなかったけどね」

「いいえ、とっても美味しかったし、楽しかったです」

「そうかい? そう言ってもらえると、僕も嬉しいよ」

「では、失礼します」

「うん。気を付けてね」


新藤さんにお辞儀をし、彼に背中を向けようとした時、


「あ、楠くん」


新藤さんに呼び止められた。


「はい?」

「その……」


新藤さんは、彼らしくもなく口ごもっていた。私は、特に急ぐ理由もないので、そんな彼をジッと見ていた。新藤さんは目を泳がせ、心なしか頬の辺りを赤くしたりして、何と言うか、ちょっと可愛いな、なんて思った。


「明日は、その……予定あるのかな?」

「明日ですか? 明日は土曜日ですから、会社はお休みですけど?」

「わかってる。つまり、その……君のプライベートな予定はどうなのかなと思ってね」


えっ?

これって、もしかして……もしかする?


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