ニムロッド
この世界の色
昔から太陽が嫌いだった。
日焼けするからとか、見るとくしゃみをするからとかじゃなくて、ただ漫然と、理由もあるようなないようなふやふやした気持ちで嫌っていた。
朝が来ると太陽が昇る。そうすると、まず、金星が見えなくなる。鳥たちがわめき出す。私とかが起きて、体内時計がリセットされて嫌でも動かなくちゃならなくなる。角度が低いうちは影もうんと長いし、肌に触れる空気がよそよそしい。網膜を焼き付ける強すぎる光だった。
昼は昼で、全部全部が日に照らされて隠し事をさせてくれない。おせっかいなんだってちっともわかってくれない。
夕方、ようやく太陽は沈む。でもその前に、ここが見せ場とばかりに、熟れたオレンジ色に町中を染めていく。あれは全く気にくわない。なにを気取っているのか。みんな夕陽を見て感傷に浸ったりして過ぎるだけのものになにを求めているのか。
ようするに私は、太陽のぜんぶわかっているふうな振る舞いが大嫌いなのだ。すべての人に等しく明ける夜なら夜のままで構わない。ずっと夜と融けていたい。キラキラした太陽なんか、本当に、大嫌いだ。
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