愛させろよ。
三種類の楽譜をひらひらさせて来た俺に、先輩は言った。

「まずクシナダから。これがわかれば、後はなんとかなるから」

「……はい」

先輩は、目の前の机に楽譜を広げた。

「ほら、見て。最初は左端に何もついてないでしょう? でも途中で転調して、いろいろつき始める」

「……はい」

「わかってないみたいね」

先輩は、シャープ・フラットの仕組みや転調の意味について、説明してくれた。

ひとつの楽譜を二人で見るので、先輩がとても近くにいた。

時々、俺の右手と先輩の左手が触れあいそうになった。

そのたびに、俺は勝手に赤くなり、先輩に変な顔をされた。
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