鬼部長の優しい手



「よし、じゃあ今日から七瀬は、
俺の彼女だ。


…あ、もうこれから山本に
笑いかけるなよ。
なんか話しかけられても
無視しろ、無視。」


「え!?
そんなの無理ですよ!
それに山本くんは、黛実のことが…っ」



“黛実のことが好きなんですよ”
そう言おうとした瞬間に、
唇に感じた柔らかい感触。

部長との初めてのキスは、
強引で、でも優しく、
意図も簡単に奪われた。



「ぶ、部長…っ」


そろそろ酸素がもちません!


苦しいことを部長に伝えようと、
ドンドンと部長の胸を叩くと、
部長はゆっくりと私から離れた。







いつも、クールで仏頂面な部長が
こんなにも嫉妬深いなんて思わなかった



「…めんどくさい男に捕まったって
思ったか?

でも、残念だったな。


もう、一生離す気なんてないから。
…覚悟しろ。」




部長は得意気に微笑みながら、
どこか嬉しそうにそう言った。




なんか、悔しい。
私ばっかりドキドキして、
私ばっかり好きみたい。




私は意を決して、
部長のネクタイを引っ張り、
意地悪そうに微笑む、その唇に
今度は私からキスをした。




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