鬼部長の優しい手
「身勝手なのは、わかってる。
わかってるんだが、
今更お前を手離すなんて、
もう無理なんだ。」
「…なんで、そんなこと言うんですか…」
少し泣きそうな顔をして、でも私の目を真っ直ぐ見つめて部長が言ってくるものだから、私は思わず泣いてしまった。
好き。好き。
きっと、もう部長しか好きになれないくらいに、どうしようもないくらい
部長が好き。
「…好き。好きです部長。
ずっと、ずっと一緒にいたい。
…部長の彼女になりたい。」
「…いいのか?俺で。
…電話は一日何回もするし、
触れたくなったら仕事中だって
抱き締めるし、
会いたくなったら夜中だって会いに行く。
他の男と話してるだけでイライラするし…」
部長は、私の顔を覗きこみ、
深く息を吸い込んで、もう一度、
“俺でいいんだな?”と聞いてきた。
…仕事はできるのに、
本当に、どっか抜けてるって言うか、
女心ってものを全然わかってくれない。
…部長のバカ。
「部長がいいんです。
…もう待つのは疲れました。
今すぐ部長の彼女になりたいんです。」
鈍感な部長でも、わかるように、
真っ直ぐ目を見つめて、
私は精一杯そう言った。