鬼部長の優しい手




「…あのさ、黛実、
聞いてくれる?」


「…うん。」


真っ赤な顔、でも真剣な表情、
少し潤んだ瞳で、でも真っ直ぐ
しっかりと、私を見つめる山本。



今、世界中で二人きりになった感覚。
自分の大きすぎる心音しか聞こえない。


少しの沈黙のあと、
山本は、また大きく息を吸って少しずつ話しはじめた。





「…俺はさ、本当に黛実ちゃんが
思ってるような男だよ。

ふざけて軽いこと言うくせに、
行動は起こせない。
後先ばっかり考えて、今ほしいものはなにか、それすらも後回しにしちゃうような馬鹿なやつだよ。」



「…うん。」




知ってる。
あんたのことは、きっとこの世界中の
誰よりも知り尽くしてる。

回りに気を配りすぎて、自分のことは
いつも後回し。

悩んでるそぶりも、疲れた顔も、
人には絶対に見せない
そうやって、いつもへらへら笑ってる。


…だから、だからイライラするのよ。


自分のことは一切言わずに、
へらへら笑って“大丈夫。なにもないよ”
なんて言うから。



そんなことを考えイライラしている私を
よそに山本は、また、ぽつぽつと話しを続けた。




「…本当にふざけたやつだよ。



でもさ、これだけはわかってほしいし、
これからも絶対揺るがないことだから、




俺は、いつだって黛実が好きだ。」





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