鬼部長の優しい手




…ああ、もう、本当にこいつは
いつもそうやって、意図も簡単に
私のペースを乱すから嫌だ。




視界が滲み出すのを感じた私は、
慌てて濡れたまぶたを拭い、山本の
目を見つめた。




「…あんたっていっつも、そうよね。」


「え?」



私の言葉の意図がわからなかったのか、
山本は首を傾け、そんな間抜けな声を
出した。



「普段はふざけてるくせに、
キメるとこだけ、ちゃっかりキメちゃって。


…いつもそうやって、簡単に私の心を
乱して、むかつく。」



「…黛実ちゃん、それって…」



理不尽な怒りをぶつける私と、
未だ、状況を飲み込めないでいる山本。



ねぇ、ちょっとは私の気も知った?



必死で恋愛してんのは、あんただけじゃないの。



「いつだって私を好き?

そうでなきゃ困る。
私のあんたへの想いの深さと、
バランスとれないじゃない。」




バランスが崩れてしまえば、
恋愛ってものは面倒で、意図も簡単に
崩壊へ向かい、修復が難しくなる。





「なにがあったって、あんたについていく。



あんたもこれだけは覚えといて
もうこれ以上ないってくらい、
私があんたを好きってこと」




それでも、恋がしたいと思うのは、
きっと人間の性で、


私がそう思うのは、きっとこれから先も
山本限定なのよ。





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