鬼部長の優しい手


「な、なに笑ってるんですか!」


「悪い悪い。我慢しようとしても、
つい口が緩むんだ。」


“名前呼ばれただけなのに、こんなに嬉しいなんて、おかしいよな”と、付け加え、
部長はまた嬉しそうに笑った。


部長、嬉しそう…。
部長がそんなに笑ってくれるなら、
恥ずかしくても、また呼んでみようかな。


私は密かにそんなことを考え、
笑顔の部長につられて、微笑んだ。


「二人ともにやけすぎ。
ここ職場!あと私も居るからね!?」



笑い合う私と部長を見て、呆れたように
微笑んでそう言った香澄先輩。


そうだ、いくら皆が昼食をとって、
喫煙室にいないからって、ここは職場だし


なんか、急に恥ずかしくなってきた…



そう思った瞬間に、
顔に熱が集中する。



「…真っ赤だな。誰かに見られるかもって恥ずかしくなったのか?
可愛いやつ。」


焦る私をよそに、部長はそう言ってまた
意地悪な笑みを浮かべた。



なんで、そんな余裕なの!?
私ばっかり悩んで…なんかまた恥ずかしくなってきた!


赤くなった顔が、より赤みを増した。



「はぁ…。私が何を言っても、あんた達は変わらないみたいね。バカップルめ。

独り身は大人しく退散するわよ。」


“イチャついた後は、しっかり働きなさいよ?”と、去り際にそう付け加え、
微笑んだ後、香澄先輩は喫煙室を出ていった。




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