鬼部長の優しい手


2人で控え室を出て、
教会の扉の前まで行く。

扉の前には私たちをみて微笑む
お父さんと香澄先輩。


「…塚本くん、娘を頼んだよ。」

「はい、もちろん。」


そう言って握手を交わすお父さんと
部長を見て、また泣きそうになる私。


…今日、一生分泣くかもしれない。

そんなことを考え、部長から離れ、
お父さんの腕をつかむ。


「じゃあ、扉が開いたら、
塚本から先に入って。

そのあと、七瀬とお父さんが入ってください。」


「は、はい。」


香澄先輩の言葉に、お父さんと私と、
二人して声をそろえて返事をした。


…自分で思ってるよりも、
ずっと緊張してる私。
お父さんも顔が強ばってる。


…本当にこれから私、
赤い道を、バージンロードを歩くんだ。



緊張で思わず、ぎゅっとお父さんの腕をつかむ。

するとお父さんはこっちを向いて、
口パクで“大丈夫。”と行ってくれた。




「じゃあ、いくよ?」


香澄先輩のその言葉と同時に、
香澄先輩と、もうひとりのスタッフさんが扉を開けた。

とたんに眩しいほどの光が目の前を
真っ白にする。


「じゃあ、お先に。」

部長はそう囁いて、真っ直ぐ、
みんなが待つ教会の中へ歩いていった。


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