鬼部長の優しい手


「ぶ、部長!?なにして…っ!」


「お、はじまった!」


焦る私の耳に届いた、楽しそうにそう言った山本くんの声。


始まったって、まさか…っ


私の予想通り、部長は手を使わず、ガーターベルトを噛み、口でするすると外していく。


…サムシングフォーのひとつ。
サムシングブルー。


…まさか、本当にやるなんて…っ!


焦る私をよそに、順調に外していく部長。
その顔はとっても楽しそうだ。


…部長、なに楽しんでるんですか!
そう言いたかったけど、恥ずかしさと緊張で
声がでなかった。

時折足にかかる吐息とか、部長の唇とか、そんなのが気になって、
全神経が足にいってる感じ。


もー!早く終わって!


私のその心の声と同時に足から、するりとガーターベルトが外された。

冷や汗を流しながらほっと胸を撫で下ろした私の横で、心底楽しそうな顔で涼しげに微笑んでいる部長。

その手にはしっかりと、
ガーターベルトを持って。


「さーて、外れたことだし、
ガータートスやろっか!」


その香澄先輩の声とともに集まってくる出席者達。

「ブーケトスは後でってことで!
はじめるよー!」


…サムシングブルーは青いガーターベルトのこと。
そのガーターベルトを手を使わずに口で新婦の足から新郎がとり、その後、そのガーターベルトを投げてそれをとった男の人が次に結婚できると言われている。
つまりは、ブーケトスの男性版。
< 186 / 188 >

この作品をシェア

pagetop