鬼部長の優しい手

だから、てっきり部長はガーターベルトを
投げるんだと思ったら、


「嫌だ。」


「…え?」


香澄先輩がガータートスの開始を告げた後、
部長は不機嫌な顔でそう言った。


…嫌だって、どういうこと?

部長の言葉を理解できずにいるのは私だけじゃないみたいで集まった人達が訳がわからないという顔をしている。


「ぶ、部長?」

「誰が好きな女のものを
他の男にあげるんだよ。」


「え?」


「七瀬はもう俺のだ。七瀬が持っているものも
身に付けているものも、絶対誰にもわたさない。」


…なんですか、そのジャイアン的発言は。
その言葉にときめく私はもうどうかしてる。


「…なにを言い出すかと思えば…」

「なにそのむかつくのろけ。」

「まぁまぁ、幸せそうで何よりじゃない!」

香澄先輩、山本君、それに続いて黛実が、
呆れたようにそう言って大口をあけて笑いだした。


それにつられたように、その場にいる全員が笑いだす。



…私と部長を除いて。


「もー!恥ずかしいこと言わないでください!
部長の馬鹿!」

「お前のことに関しては俺はいつだって馬鹿だよ。」


その言葉にまた、きゅんときちゃう私も、
部長と同じく馬鹿なのかもしれない。


この先ずっと部長に鼓動速度をあげられるだろうなー、
…でもまぁ、それも悪くない、かな?



私はそんなことを考え、隣で得意の意地悪な笑みを浮かべる部長に抱きついた。






Fin
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