鬼部長の優しい手


書類整理に戻った直後、
ぽん、と、頭に何かを乗せられた感覚に、
慌てて上を向く。

すると、いつも通りの無表情で、
私の頭に手を乗せる部長が目に入った。


「ぶ、部長……!?」

「……その、なんだ、
あ、あんまり思い詰めるな。」

「え…」


部長は私の頭に手を乗せたまま、
ぽつりぽつりと、一言ずつ、
聞こえるか聞こえないかという、小さな声で、
そう呟いた。

……顔、眉間にしわがよっててすごく怖いけど、
これは部長なりの励まし方、なのかな?


その不器用さに思わず、
ふっ、と小さく笑ってしまった。


「お、お前……!
人がせっかく……」

「す、すみません。
でも、なんだか嬉しくて。」


私がそう言うと、部長は尚も私の頭に手を
乗せたまま、ふいっと顔を背けてしまった。

……眉間にしわがくっきりと浮かんで、
怖いはずなのに、部長の手、あったかいなあ。
なんか安心する。



「あのー、お二人さん?
いつまでそうしてるつもりですか?」


部長の大きく、温かい手に集中していた意識が
山本くんのその言葉で、我にかえった。
それは部長も同じだったみたいで、
私の頭から慌てて手を引いた。

「あ、わ、悪い……!
少し励ますつもりが、その、
手を離すタイミングを逃して……っ」

「い、いえ。
私こそ、すみません……!」

ただでさえ、部長の手の感触に妙に照れてたのに、
山本くんににやにやと見られて、
余計に恥ずかしくなった。


周りの人達も
“え?あの二人ってそういう関係?”とか、
誤解して変に盛り上がってるし……
……恥ずかしい。

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